社会福祉法人わたぼうしの会
Good Job!センター香芝
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株式会社スリーディー・システムズ・ジャパン
大阪工業大学 ロボティクス&デザイン工学部
ダカラコソクリエイト

これまでの取り組み

「Good Job!センター香芝」は障害のある人のすぐれた手仕事や表現と、デジタル工作技術を組み合わせて、クリエイターとともに新しい仕事づくりを行ってきました。3Dプリントされた型でつくる張り子や立体成型できる紙漉きの製法と道具を開発して、新しい工芸として商品展開。治具や補助具など自分たちが必要な環境を自分たちでつくり、障害のある人をはじめ、さまざまな人がつくり手として関われるよう試行錯誤してきました。

2019年度の取り組み

創作表現の新しい手法として、デジタル技術を生かして作品を制作することを目標のひとつにしました。ハプティクスという触覚技術を使った「Freeform」という立体造形システムを活用し、障害のあるメンバーと一緒に3Dモデリングにチャレンジ。イラストや文字の創作経験を生かし、表現の幅を3次元へと広げました。また、商品の製作工程や使用する道具などを映像で可視化して、つくり手やお客さんも製造プロセスを理解できるような資料を作成しました。

課題と展望

IoTの活用について、研究の領域から現場での実践・活用には至れていません。ものづくりやケアの現場において、見守りや効率化だけではない活用アイデアを抽出するための実験を重ねる必要があります。また、デジタルファブリケーションの強みである個別固有のものづくりのよさを最大限に生かし、一点ものとしての表現も探求し、作品や商品のアウトプットのバリエーションを広げたいと考えています。

Topics

01 触覚技術「Freeform」で3Dモデリングにチャレンジ

株式会社スリーディー・システムズ・ジャパンの協力のもと「Freeform」を活用し、3Dモデリングに取り組みました。このシステムは、ペン型の3Dマウスで押したり引いたりすると、デジタルでありながらあたかも粘土を実際に触っているかのような感覚で造形ができるというもの。素材が不要なため自由な造形や着彩が可能となります。オンラインゲームやタブレットに慣れている20〜30代との親和性が高く、立体造形の新たな表現手段の可能性を感じました。

02 教育機関との共同研究

大阪工業大学と協働し「ものづくりデザイン思考実践演習Ⅰ」という講義のなかで、Good Job!センター香芝のオリジナルマスコットである張り子「Good Dog」をモチーフに、商品の製造工程がわかる映像記録とQRコードを活用したアーカイブ資料を作成しました。目的は、製造にはじめて関わるつくり手が映像を見て視覚的作業を理解しやすくすることです。また、3Dプリンタを活用して張り子の型が製造されていることや、伝統的な素材や工法をふまえて制作されている背景を紹介するプロモーション映像も制作しました。

03 遠隔地間の製造レシピのシェアによる仕事づくり

「がん経験者だからこそできること」をテーマに活動するソーシャル・デザイン・プロジェクト「ダカラコソクリエイト」から「めでぃかるガチャガチャ3DP」の製造依頼を受けました。これは、がん経験者がお世話になった、あるいは医療者のみなさんがよく使う医療機器が3Dプリントされたミニュチュアのチャームガチャカプセルです。「IoTとFabと福祉」のネットワークを生かして、遠隔地間の団体で製造レシピをシェアし、社会的に意義のある仕事となることをめざしています。

Voice

Good Job! センター香芝 職員

デジタル技術の活用は課題解決のための手段のひとつ。商品本体の製造加工だけでなく、道具や環境づくりに活用することで、選択肢が広がることを実感してきました。異なる分野の技術導入には負荷や障壁を感じることもありますが、地域課題への関心が高いファブスペースも多く、エンジニアと福祉施設が交流し、情報や人材を組み合わせていくことで、新たな実践例が生まれると考えています。

ダカラコソクリエイト 発起人/プロジェクト協働者

がん経験者と障害のある人の共創を進めてきました。3Dプリンタを使った医療機器ミニチュア「めでぃガチャ」の製作も今年で2年目になりました。認知度が高まり受注量も増えたことで、全国の複数拠点との連携生産という新たなチャレンジにも展開。それもデータ共有ができるIoTとFabならではのことだと思います。社会課題の当事者とテクノロジーの掛け算が生み出す新しい価値に、わくわくが止まりません!

3Dプリンターメーカー 社員

デジタルツールに高性能を求めて限界を嘆くのではなく、メリットを最大限に活用するために、伝統工芸と組み合わせて独自のプロセスを考案し、少量多品種の製造を実現している点に感銘を受けました。福祉施設に限らず、ものづくりに関わる多くの人にこの取り組みを知ってもらいたいと思います。今後は「つくってみたい!」という人が自分でモデリングできるような環境づくりを支援していきたいです。