社会福祉法人大和福祉会
周南あけぼの園・光あけぼの園
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ファブラボ山口
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山口大学国際総合科学部

これまでの取り組み

2017年度は、福祉施設と技術者との関わりがなかったこともあり、関係づくりからはじまりました。まずは勉強会を開いて互いの活動を知り、福祉施設と大学がコラボレートできそうなことをマッチング。授業の一環で「なぜ技術を使いたいか」を改めて確認するデザインリサーチや、「何ができるか」を体感する機材講習を実施したほか、県内の芸術・産業施設、高専や工房と協力しながらデジタル工作機械の活用を試みました。

2019年度の取り組み

福祉施設と学生が協働で行う仕事づくりを支えるために、学びの環境の整備をめざしました。刺繍や縫製を得意とする施設「光あけぼの園」では、帆布を使った品質と創造性の高いバッグを製造。その過程で出るハギレを活用し、新商品に転用することもアイデアのひとつです。工房「ファブラボ山口」に所属する大学生は、実現に向けて一緒にアイデアを考え、技術面をサポート。次世代を育てる循環をつくろうと、大学との連携を深めました。

課題と展望

福祉の現場は、日々誰かの生活や働きを支えています。その場を開放し、福祉を専門としない、デザイン・技術スキルをこれから身につけていく学生たちを受け入れることは、刺激的な挑戦である一方、ときに現場の負担となるかもしれません。しかし、そこにものづくりのプロであるファブラボと、学びを継承していく教育機関が加わることで、単発ではない継続的な関係性を築くことができます。今後さらに地場産業とつながることで、福祉に新たな仕事や関係を生み出す可能性も期待したいです。

Topics

01 「福祉と技術をつなぐ人」を育てる仕組みと仕事づくり

テクノロジーを使いこなすことが難しい福祉の現場にとって、気軽に相談でき、福祉に理解があり、技術スキルもある「福祉と技術をつなぐ人」は重要な存在です。しかし、地域にそのような人材は少なく、職業として成り立つ仕組みもありません。この現状に対して、ファブラボ山口を中心に変化が生まれています。所属する学生が、スキルアップの機会を得ながら福祉施設とともにものづくりを実践。協働のなかで仕事をつくる試みがはじまっています。

02 ハギレを活用した新商品の開発

バッグなどの製造過程で出るハギレを有効活用し、新商品や型紙に転用する可能性を模索中です。バッグのジッパーに付ける刻印入りのジッパープル(つまみを延長する紐)や、アクセサリーパーツの革チャームをつくるための型などを試作しています。新商品のバッグは、2020年3月開催のイベントにて販売開始を目標に開発を進行。作業しやすいように、また作業できる人が増えるように、その工程も試行錯誤しています。

03 次の世代につなぐ大学の役割

学生が福祉やファブラボに関わっていくためのきっかけのひとつとして、山口大学国際総合科学部では、3年生を対象に「インクルーシブデザイン」という講義で学びと実践の機会を提供しています。2017年にはじまり、2019年は発達障害のある子どもや、学校が苦手な子どもとその家族とデザインチャレンジを実施。コミュニケーションをとりながら、共同で課題のリサーチや解決アイデアの提案を行いました。学生は毎年入れ替わりますが、講義を通して、継続的な関係性を築いています。

Voice

山口大学国際総合科学部 講師

学外のデザインパートナーとの協働による実践的な講義を通して、学生に福祉と技術に関する意識的変化のきっかけを与えられたと感じています。また、山口大学では2019年度より、4年生の卒業研究プロジェクトにて、福祉と新たな技術に関するテーマを展開しています。「福祉と技術の関係づくり」という課題に対し、デザイン教育を行う大学がどのように関われるか、今後も長期的に実践的な活動を継続します。

山口大学国際総合科学部 学生

活動を通して、新しい働き方や仕事の可能性を実感しました。それもさまざまなな人たちとの協働あってこそだと思います。しかしながら、学生や一般の方が課題解決に取り組もうとしたときに、物理的あるいは制度的な課題があるのはたしかです。Fabが身近なものに感じられ、誰もが簡単に、積極的に課題と向き合える環境が整備されていくことを期待します。

光あけぼの園 職員

これまで施設内で試行錯誤しても解決してこなかった技術面の課題について、さまざまな意見をいただきました。施設外に商品製作や作業環境について相談できる人がいることの安心感は大きく、ものづくりの可能性が広がるのを感じています。ものづくりのワクワクを多くの人と共有しながら、人と人とがつながることで生まれる、新たな世界に胸膨らませています。

ファブラボ山口 運営スタッフ

福祉マインドを持ったテクノロジー人材を育成し、地域で共有するというイメージをもって、今回のプロジェクトに取り組みました。習得した技術を福祉の現場に還元していくためには、時間をかけて関係性を築いていくことが重要。活動の火を絶やさないように、インターン生の受け入れも含めて、今後も継続してこのテーマに関わっていきたいと思います。