一般社団法人生き方のデザイン研究所
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西日本工業大学デザイン学部
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九州大学大学院芸術工学研究院

これまでの取り組み

生き方のデザイン研究所では、障害のある人たちが3Dモデリングなどの技術を習得。西日本工業大学の学生と協働しながら、スキルを生かした活動に取り組んできました。その一貫として、九州大学大学院芸術工学研究院の平井康之先生から依頼を受け、世界の偉人、著名人などをモチーフにしたグッズをデジタルファブリケーションにより作成。全盲の人も触って確かめられるよう、フェルトなどの素材を使い、製作者の感性を生かしたキャラクターづくりを試みました。また、学生とともに自助具開発をテーマにしたものづくりも実施。

2019年度の取り組み

3Dデータ作成ソフト、プリンタ、スキャナーの使用法を習得し、障害のある人が「デジタルメイカー」として講師になることをめざしました。実践の場として、子ども向けワークショップを開催。さらに、デジタル工作機械を利用して、手芸用のオリジナルパーツを作成したり、絵画を立体化したグッズを製作したりすることで、障害のある人の感覚や感性を生かした商品開発を模索しました。

課題と展望

職員数が限られ、3Dモデリングや3Dプリンタに関する技術・知識も乏しいという状況のなかでは、レクチャーやトラブルシューティングに対応する難しさがありました。そのときに重要だったのは、専門機関である大学や、そこで学びを身につける学生との協働。生き方のデザイン研究所会員の作業療法士、障害のある人たちと接する機会を通して、ともに主体性をもって活動を展開していく関係性を築いていきました。今後は、北九州市内はもちろん、より広い地域で連携をとり、交流をはかりながら製品開発をしていくことが目標です。

Topics

01 幅広い世代と分野の人たちに体験イベントを実施

2019年8月に「わくわく親子3DCafe」を実施。子どもや作業療法士が参加するなか、障害のある人が「生き方のデザイナー」として、3Dデータのつくり方や3Dプリンタの使い方をレクチャーするファシリテーターとして活躍しました。2020年2月には「ココからはじまるデジタルファブリケーション~3Dプリンタと出会ってみませんか~」をテーマに、3Dプリンタで何ができるのかを学び、実際につくる体験ができるイベントも開催。

02 障害のある人の感覚や感性をプロダクトに

右半身と視覚に障害のあるメンバーのKさんが、リハビリではじめた絵手紙がとてもユニーク。この絵手紙で生まれたキャラクターを、3Dプリンタなどを使ってプロダクト展開したいと考えています。また、全盲の人が科学者をイメージして型紙を制作し、それをもとにレーザーカッターでフェルト素材をカット・積層させたマスコットをデザイン化する、科学館向けのグッズ開発も引き続き検討中。

03 地域の福祉施設とのコラボ企画をめざす

生き方のデザイン研究所が運営する小規模共同作業所「ビリーブ」。そのなかで活動する手芸を中心としたグループ「シュゲ~ブ」は、小ロットでは割高になる手芸パーツを3Dデータ化することに取り組み、手芸ワークショップも行いました。平面的なモデリングから立体的なものを形づくるデザインにも挑戦。回転するキーホルダーなどの製作に応用する取り組みも行いました。このような活動を北九州内の福祉施設・団体と連携しながら展開していくことをめざしています。

Voice

一般社団法人生き方のデザイン研究所 職員

職員が利用者に対して一方的に指導するという構図になりがちな福祉業界においては、新しい技術を取り入れることで、より対等な関係で活動していけるという点も「IoTとFabと福祉」の魅力なのではないかと思いました。そして、それぞれの「想いをカタチにしたい」という気持ちの高まりに触れ、3Dプリンタや3DCADが、障害のある人の本音や意外な一面を見せてくれるようなコミュニケーションのきっかけになったと感じています。

西日本工業大学デザイン学部 教授

ものづくりの技術を身につけようとしている学生が、「人が何を必要としているか」からはじまる人間中心設計(Human Centered Design)を学ぶ機会として、有効なプロジェクトでした。IoTもFabも技術のひとつ。それを「福祉」という分野で人の幸せのために応用する・人間化するデザインの考え方を、改めて認識することができ、これからのデザイン活用についても考えさせられました。